藤代だより
2012年12月号
日本の良き伝統
冬将軍到来といったような寒い日が続き、野菜達の成長も遅れ、葉菜類、果菜類の価格が落ち着かずご迷惑をおかけしております。仕入部酒井です。寒さで朝の市場通いは身にこたえますが、乾いた空気のなか、昇る朝日の美しさにしびれています。
12月も中旬を迎え市場もかなり暮れムードを漂わせ、お節に使用する野菜達が順調に入荷しています。
お節というと、今ではコンビニやスーパーでも買えますが、以前は時期の節に、その時期にある食材で、保存食として、また家内安全や子孫繁栄、豊作を願っての理にかなった意味のあるお料理です。
入荷している野菜でいうと、さつま芋や栗を使うきんとんは、黄金色に輝く財宝に例えたり、華やかさを意味します。
煮物の八つ頭や里芋は、子芋がたくさんつくので、子孫繁栄を、蓮根は穴があき、先を見通せるように、くわいは大きな芽に出世を祈り、ごぼうは地にしっかりと根を張るように。
また大根と人参などで作られる紅白なます、紅色はめでたさ、白色は神聖さを意味しているそうです。
このように、各食材、各料理に意味や物語をもたせ、生活の基本となる「食べる」ということに、また新年をむかえるにあたって感謝の念を抱く日本の食文化は素晴らしく、そして奥が深いと思います。
しかし最近では産地の高齢化や、生産コストの上昇ということから季節伝統野菜からの撤退または生産者さんの減少の話もよく聞くようになり、歯痒く思っています。
我々、末端ではありますが、飲食業界に携わる人間として、良い伝統、習慣は守り伝えなければならないと、勝手な使命感をもっています。またそれを進化させるためにも、尽力していきたいと思います。
平成24年も大変お世話になりました。来年も初心を忘れず、日々精進していきますので、ご指導よろしくお願いいたします。
良いお年をお過ごしくださいませ。